口唇口蓋裂について

2019.06.23 08:30:06

皆さん、こんにちは。
本日も、医療法人恵優会にご来院いただきありがとうございます。
今回は、口腔と顎に発生する先天性の形態異常の中で最も多い

「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」についてお話をしていきます。

口唇口蓋裂とは
1.口唇裂
2.口蓋裂
3.原因について
4.発生頻度について
5.治療について

口唇口蓋裂とは

口唇口蓋裂とは、先天性異常の１つで唇、歯茎、口蓋（口の中の上の部分）に割れ目が残ったまま赤ちゃんが生まれてくる病態です。基本的に治療は手術で縫い合わせていきます。現在の技術では手術を受けたことがほとんど分からないような結果を得ることができます。

1.口唇裂

唇の一部に裂け目が現れるのを口唇裂、唇裂といいます。口唇裂は鼻まで達するものを完全口唇裂、達しない不完全口唇裂、他に片側性・両側性に分けられます。

また、軽微な口唇裂を痕跡唇裂といいます。

2.口蓋裂

口蓋部における破裂があるものを口蓋裂といいます。口腔と鼻腔が直接つながってしまうため、誤嚥性肺炎を併発することもあります。そのため、内科的治療としては誤嚥性肺炎の発生を防ぐことに努める必要があります。根本的治療は外科的に裂け目を閉ざす事が必要になります。

3.原因について

原因としては、

➀胎児に脳内の圧力が異常に増すこと

顔や口蓋が形成される2～3か月の妊娠初期の胎児に、脳内の圧力が異常に増すと起こる場合があります。

➁風疹ウイルス感染

母体が風疹ウイルスに感染した場合、胎児にも感染し、口唇口蓋裂が起こる場合があります。

③催奇性薬剤

薬剤による催奇形性の発生率は非常に少ないと言われています。

鎮痛剤も催奇性薬剤の一種です。
妊娠中に歯が痛い等で相談の結果お薬を処方する場合は、お体への影響を考慮して

胎盤を通過しないもの、安全性が認められているものを処方致します。

➃放射線照射

歯科用のレントゲンは口腔内を撮影するものなので、お腹との距離もあり、赤ちゃんとお母さんご自身の影響も少ないです。

レントゲン撮影を行う場合は、お腹を防護エプロンで覆い、保護した状態で行います。

⑤母体の栄養障害

葉酸には奇形児を予防する効果があるとされており
実際に、葉酸の補充は受胎しようと試み始めてから妊娠12週までの女性に、

国際的に推奨されています。

葉酸は、野菜や豆類にも含まれていますが、

主に、海苔などの海藻類やレバー等のお肉にも多く含まれています。

※レバーは、葉酸の他にもビタミンAが豊富になので、妊婦さんが摂取しすぎると
奇形児のリスクが高まるリスクがあるので注意が必要です。

厚生労働省は妊婦のビタミンAの上限量を3000μgREに設定しており、鶏や豚のレバーでは１切れでこの上限を超えてしまいます。

⑥母体の精神的ストレス

妊婦さんは不安定になりやすいので、家族等の身近な方のサポートも重要です。

また、イライラ等が募り人にあたってしまう事もあると思うので、家族等には

これから起こりうる事をあらかじめ伝えておくと、サポートする側の心の準備もしやすいかも知れません。

⑦遺伝

日本では、８．７％から１６．０％の関与と言われています。

口唇口蓋裂の原因は様々ですが、7割の原因は不明とも言われています。

4.発生頻度について

口唇口蓋裂をもって生まれてくる赤ちゃんの頻度は、日本では500人に1人程度と考えられています。人種による差も相当あることも知られていて、東洋人は最も頻度が高いと考えられています。赤ちゃんの生まれつきの異常には数多くの種類が存在しますが、その中で口唇口蓋裂は最も頻度が高いものです。500人に1人ですので社会には赤ちゃんの時に手術を受けた患者さんがたくさんいらっしゃいますが、ほとんどの場合その傷跡に気がつかないようになっています。